エピソード
中禅寺湖の北に広がる標高1,400メートルの湿原。その名は、男体山の神と赤城山の神が中禅寺湖をめぐって争った「神戦」の伝説に由来する。男体山の神は大蛇に、赤城山の神は大ムカデに化身して戦い、この湿原が戦場になったと語られる。湿原の各所に残る「赤沼」などの地名も、この神話と結びつけて語られてきた。
噂として語られるのは、霧の中に人影が立っていた、夜の木道で背後から足音がついてきた、誰もいない湿原で声を聞いた、といったもの。戦場ヶ原は霧の名所であり、視界が数メートルまで落ちる濃霧の中では、木道の先の立ち枯れの木が人影に見えることも珍しくない。神々の戦場という土地の名が、霧の風景に物語を与えている。
昼間はハイキングと星空観察の名所で、木道を歩けば貴重な湿原植物と野鳥に出会える。夜は本格的な山の闇になり、鹿や熊も生息する。神話の古戦場は、霧の晴れた朝がもっとも美しい。