エピソード
奥久慈の竜神峡に架かる歩行者専用の吊橋。全長375メートル、湖面からの高さ100メートルという規模は歩行者用として本州屈指で、橋の上から見下ろす竜神ダム湖の景色は圧巻である。峡谷にはその名の通り竜神が棲むという伝説が古くから伝わり、ダムの底に沈んだ淵は竜の住処だったと語られてきた。
一方で、高い橋の常として悲しい出来事も語られてきた場所であり、夜の橋にまつわる噂が絶えない。欄干の外に立つ人影を見た、橋の下から視線を感じた、峡谷からすすり泣きのような声が聞こえた、といった話が代表的だ。峡谷を吹き抜ける風が橋のワイヤーを鳴らす音は、確かに人の声のように聞こえることがある。
現在はバンジージャンプの名所として若者で賑わい、鯉のぼりまつりの時期には峡谷いっぱいに鯉のぼりが泳ぐ。橋の通行は日中のみで、夜間は渡れない。竜神伝説の峡谷は、日の高いうちにこそ美しい場所である。