エピソード
有明海の干潟に、朱の鳥居が三基、海へ向かって立ち並ぶ。満潮時には鳥居が海に沈み、干潮時には歩いてくぐれる――「月の引力が見える町」太良を象徴する光景である。この鳥居には伝説がある。悪政を敷いた代官を懲らしめるため、島で酒宴を開いて置き去りにしたところ、大魚が現れて代官を救った。改心した代官が魚の神を祀ったのが大魚神社である――。
語られる話は、夕暮れの干潟で人影を見た、夜の鳥居の間に灯が浮かんだ、といったもの。六時間ごとに現れては消える鳥居の風景そのものが、この世とあの世の境目めいた雰囲気をまとっている。
干満の時刻を調べてから訪れるのがコツで、夕日と満潮が重なる時間は絶景である。有明海の恵みへの感謝が形になった、美しい信仰の風景である。