エピソード
瀬戸内に浮かぶ周囲4キロほどの小島。現在は数百羽のウサギが暮らす「ウサギの島」として世界的な観光地だが、戦時中は毒ガス製造の一大拠点であり、機密保持のため地図から消されていた歴史を持つ。製造に従事した多くの人々が後遺症に苦しみ、島には毒ガス資料館が建てられて、負の歴史を今に伝えている。
島内には発電所跡や貯蔵庫跡などの巨大な廃墟が点在し、蔦に覆われたコンクリートの闇は昼でも冷たい。語られる噂は、発電所跡で人影を見た、廃墟の奥から音が聞こえた、といったものだが、この島で本当に向き合うべきは怪談ではなく、資料館が伝える歴史そのものだろう。
忠海港からフェリーですぐ。ウサギと癒やしの島の顔と、戦争の島の顔。その落差ごと体験することが、この島を訪れる意味である。