エピソード
上毛三山の一つ榛名山の頂にあるカルデラ湖。湖畔から榛名富士を望む景色は群馬を代表する風景だが、この湖には木部姫の伝説が伝わる。戦国の世、嫁ぎ先を追われた姫が湖に入水し、蛇身となって湖の主になったという物語で、湖畔にはゆかりの地名や供養の場が残る。湖に「主がいる」と語られてきた点で、この湖の怪談の根は深い。
噂として語られるのは、夜の湖面に女性の姿が見えた、湖畔の道で白い影とすれ違った、誰もいないボート乗り場で物音がした、といったもの。榛名神社へ続く山道や湖周辺の峠道でも、夜間の目撃談が語られてきた。標高が高く霧の出やすい湖であり、湖面から立ちのぼる靄が人影のように見えることは実際に珍しくない。
昼間の榛名湖はボートやワカサギ釣り、湖畔の散策でにぎわう観光地で、冬には湖面が凍る年もある。夜は街灯がほとんどなく、湖畔道路も暗い。伝説の湖として夜の空気は確かに独特だが、訪れるなら昼間の景色と合わせてこそ、この湖の二つの顔がわかるはずだ。