エピソード
河口湖と甲府盆地を結ぶ御坂峠の旧道に残る昭和初期の隧道。石積みのポータルが美しい登録有形文化財であり、峠の茶屋・天下茶屋は太宰治が『富嶽百景』を書いた場所として知られる。「富士には月見草がよく似合ふ」の碑が立つ文学の峠だが、日が落ちると旧道は山梨県内で語られる心霊スポットの顔になる。
噂は、坑内で人影を見た、トンネルの前に女性が立っていた、旧道のカーブでミラーに何かが映った、といった峠の定番形。旧道は現在も通行できる時期があるが、冬季は閉鎖される。
この峠の本領は、天下茶屋の前から望む富士と河口湖の大観である。太宰が眺めた構図そのままの富士を見に、日のあるうちに旧道を上がるのが正しい楽しみ方だろう。