エピソード
琵琶湖の北、余呉湖との間にそびえる古戦場の山。本能寺の変の翌年、羽柴秀吉と柴田勝家が天下の行方を懸けて激突した賤ヶ岳の戦いの舞台であり、「賤ヶ岳の七本槍」の名とともに歴史に刻まれている。激戦で倒れた兵たちの塚が山中に残り、眼下の余呉湖には天女の羽衣伝説と、戦の犠牲者にまつわる言い伝えが重なって伝わる。
語られる噂は、山道で武者の人影を見た、夜明け前に鬨の声のような響きを聞いた、余呉湖の湖面に人影が見えた、といったもの。静かな湖国の山里に、数千の兵が斬り結んだ記憶が眠っているという落差が、この山の噂の土壌である。
現在はリフトで山頂まで登れ、琵琶湖と余呉湖を同時に見下ろす絶景が広がる。戦跡の碑を巡りながら歩けば、羽衣の湖と血の戦場が同居するこの土地の不思議さが実感できる。