エピソード
薩摩半島の南、かつて陸軍の特攻基地が置かれた町。太平洋戦争末期、400名を超える若い隊員たちがこの地から沖縄の海へ出撃し、還らなかった。特攻平和会館には隊員たちの遺影と遺書が展示され、基地へ続く道には一人一基を目指して建てられた灯籠が並ぶ。日本で最も重い記憶を抱える町の一つである。
語られる噂は、飛行場跡で人影を見た、夜に飛行機の音を聞いた、といったものだが、この町でそれを怪談として消費することは適切でない。二十歳前後の若者たちが遺した手紙を読めば、必要なのは肝試しではなく、静かに手を合わせることだとわかるはずである。
武家屋敷群の美しい町並みと合わせて訪れる人が多い。平和会館は撮影禁止。遺書の前では、誰もが自然と無言になる場所である。