エピソード
石川と富山の県境の峠。源平の倶利伽羅峠の戦いで、木曽義仲が数百頭の牛の角に松明をくくり付けて敵陣に放ったと伝わる「火牛の計」の舞台であり、混乱した平家の大軍が谷底へ雪崩れ落ちて壊滅したと語られる。地獄谷と呼ばれる谷には数万の兵が折り重なったと伝えられ、峠には供養の五重塔や源平供養塔が立つ。
語られる噂は、夜の峠道で武者の人影を見た、谷の方から鬨の声や牛の声が聞こえた、旧道で灯が揺れていた、といった古戦場の定番形。峠の倶利迦羅不動寺は千三百年の歴史を持つ霊場で、合戦以前からこの峠が祈りの場だったことを伝えている。
春は八重桜の名所として賑わい、歴史国道の旧北陸道を歩くこともできる。火牛のモニュメントと供養塔を巡れば、華やかな合戦絵巻の裏の膨大な死が見えてくる峠である。